2009年12月09日
第20報 ソウルでのSurgery Firstセミナー(2009年7月19日)
顎変形症に対する外科的矯正は、主に顎骨の外科手術を担う口腔外科医と歯列矯正を担当する矯正歯科医とのチーム医療で行われてきた。その治療の進め方は、術前矯正を施して上・下顎歯列の形態を整えた後に、顎矯正手術を施し、さらに術後矯正で仕上げを行うのが一般的だ。このように矯正治療を先行させる進め方をOrthodontics First(OF)と呼ぶとすれば、OFにはほぼ半世紀の歴史があり、確実な成績を収めることができる方法として世界的に定着している。しかし、一方では、①顎変形改善の時期が遅れる、②最初に手術の時期が決められない、③術前矯正によって前歯の関係と口元の形が悪化する、④治療期間が長い(2年〜3年)などの問題点が指摘されてきたものの、それを改める術がなく、患者に我慢を強いるしかなかった。
これらOFの問題点を克服する革新的な治療法がSurgery First (SF)だ。SFは、文字通り最初に顎矯正手術を行い、後で矯正治療を施すという、これまでとは逆の手順で進められる。治療期間が短い(約1年)、最初に顎変形が改善される、手術時期が自由に選べるなど、前述したOFの欠点を解消し、患者利益が著しく増大した方法だ。私が知る限り、公的な国際会議の場でSFという治療法を発表したのは仙台チーム(東北大学病院顎顔面外科+SAS矯正歯科センター)が最初で、国際学会誌に報告したのも仙台チームが最初だ。世界に目を向ければ、他にはほぼ同時期に開始したとされる韓国のソウルチームによるSurgery First Orthognathic Approach(SFOA: http://www.asfoa.org/ )がある。しかし、最初に顎矯正手術を行うという点では同じであるものの、その内容は似て非なるものである。
仙台チームとソウルチームの最も大きな違いは、治療ゴールの設定に対する考え方だ。仙台チームでは、顎骨の問題点は外科手術で、歯列の問題は矯正治療で改善するという立場を取っているが、ソウルチームでは、顎骨の問題だけでなく、歯列の問題もできるだけ外科手術でカバーするという考え方に基づいている。すなわち、仙台チームでは口腔外科医と矯正歯科医がイコールパートナーとして連携しているのに対して、ソウルチームでは、形成外科医(口腔外科医ではない)が主導して、矯正歯科医がフォローするという連携の仕方だ。
今回の一日セミナーは、そのソウルチームのやり方に常々疑問を抱いていた韓国の矯正歯科医や口腔外科医が、仙台チームのSFを知りたいとのことでソウル大学の協力を得て企画された。
会場はソウル大学歯学部の大講堂であったが、講演は私と長坂浩先生(東北大学顎顔面外科)とがそれぞれの専門領域に分担して行った。午前9時から午後5時までの長丁場であったが、途中で立見が出るほどの盛況ぶりで、SFに対する関心の高さをうかがい知ることができた。講演では、診断や治療ゴールの設定法などSFの根幹をなす内容から始まり、多数の治験例の提示まで、詳しく解説したことから、参加者は仙台チームの臨床理念や治療技術を理解し、ソウルチームのSFとの違いを十分に認識してくれたようだ。
左の写真はセミナー後の集合写真であるが、梨花女子大学のMyung-Rae Kim学長、ソウル大学のTae-Woo Kim教授、チョンナム大学のHyeon-Shik Hwang教授など、韓国の矯正歯科界や口腔外科界の重鎮の顔も見える。
また、こちらの写真は、川村仁教授(東北大学)と私とが共著で出版した「現代外科的矯正治療の理論と実際」(東京臨床出版)の韓国語翻訳版が発売されたので、その記念サイン会風景だ。韓国美人を前に、緊張で手が震えた(笑)。
投稿者 菅原準二 : 2009年12月09日 11:34
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