2007年05月14日
13.顔面非対称の治療
厳密に言えば,顔が完全に対称形をしている人はいない.ここで言う「顔面非対称」とは,下顎骨が明らかに左右どちらかに曲がっていたり,あごの筋肉の大きさが左右で著しく異なっていて,顔が非対称形を呈している患者さんのことを指している.口の中では,下顎骨のゆがみや偏りに一致して,下顎の歯列全体が左右どちらかにずれたかみ合わせをしているのが一般的な特徴である.しかも,これらの症状は反対咬合や上顎前突など,他の不正咬合と複合している場合が多い.「顔面非対称」においては,見かけ上の問題もさることながら,非対称度が強くなるにつれて「顎関節機能障害」(顎関節症の一種で,口の開け閉めの際に痛みがあったり,ガクガクとかボキボキという雑音がする,口が開きにくい- などが主症状)を伴う頻度が高いことが最近の臨床研究で明らかになっている.
私たちの学校歯科健診データでは,軽度のものまで含めれば実に約20%もの児童生徒に「顔面非対称」が認められている.「顔面非対称」をここであえて取り上げた理由は,発症頻度が高いこと,顎関節機能障害との関連性が疑われること,見過ごすと治療が大がかりになる可能性があること - などによる.
「顔面非対称」の原因は様々で,①先天性異常,②出産時の外傷,③後天的な異常成長,④片側でのそしゃく癖,⑤かみ合わせの不調,⑥顎関節機能障害- などが挙げられている.「顔面非対称」の治療は,これらの原因を考慮して決定する必要がある.まず,最初の①②③が原因の場合,下顎骨の左右の大きさや形が異なるだけでなく,上顎骨や頭の骨にまで変形が及んでいることが多い.子供の頃に成長が遅れている部分を大きくする試みがなされているが,未だ一般的ではない.現在のところ,顎骨の成長が終息するのを見届けてから「外科的矯正」によって改善するのがより確実な方法だ.
一方,残りの④⑤⑥が原因と思われる「顔面非対称」は発症頻度が比較的高く,かつ早期に対応することで抑制および予防することができるタイプでもある.これらの原因の中で,最近注目されているのが,成長期に発症した片側性の顎関節機能障害が「顔面非対称」を引き起こすのではないかという学説である.下顎骨の成長は下顎頭(下顎骨の後上端に相当し顎関節の一部を構成)の軟骨部で最も旺盛である.下顎頭を保護するクッションのような役目を果たしている関節円板が,何らかの原因でずれたり損傷を受けて顎関節機能障害をきたすと,片側の下顎頭の成長だけが劣ってしまう危険性があるからだ.
早期に対応するためには,学校歯科健診でのスクリーニングが重要である.
投稿者 菅原準二 : 2007年05月14日 17:37
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