2007年05月13日

12.叢生の治療

「叢生(そうせい)」とは,歯が草むらのように入り乱れて並んでいる状態を表現した専門用語で,俗に乱杭歯(らんぐいば)とも呼ばれ,八重歯もその一種である.これまで述べてきた反対咬合や上顎前突など,上下の顎骨の不調和による不正咬合とは異なり,「叢生」は顎骨と歯の大きさの不調和から生じる歯列の不正である.「叢生」の問題点は,程度がひどい場合には,虫歯や歯周病を誘発するばかりでなく,一旦それらを患うと治療に支障をきたし,進行を食い止めることが難しくなることだ.「叢生」の治療法について述べる前に,その背景に少し触れておきたい.

人類の祖先が地球上に現れてから4〜5百万年,現代人につながるホモ・サピエンスが出現してからでも15万年が経過した.そもそも猿人や原人の顎骨には,32本の永久歯が整然と並ぶゆとりがあったが,現代人においてはその様な人は少なく,第三大臼歯(親不知歯)を除く28本すら並びきらなくなっている.軟食や高カロリー食など現代食文化の影響を受けて,顎骨が小さくなっているとも,歯が大きくなっているとも言われている.事実,私たちの学校歯科健診データでも小学生の30%,中学生の40%,高校生の50%に「叢生」が認められている.

 「叢生」の治療法は,大きく分けて二つしかない.「叢生」を三人がけのソファーに四人も五人も座っている状態に例えれば,ソファー(顎骨の歯槽部)を大きくして全員が座れるようにするか,あるいは座る人数(歯の数)を制限するかのどちらかである.前者については,拡大装置(ワイヤーの弾性やネジなどを利用して歯列の幅や奥行きを拡げる装置)を用いて,第三大臼歯を除く全ての永久歯を収容できるようにする方法が代表的である.後者には,いずれかの永久歯(上下の第一小きゅう歯が最も多い)を抜いて,残りの永久歯をマルチブラケット装置によって整然と並べる方法がとられる.どちらを選択するかは,「叢生」のひどさばかりでなく,顎骨や口元のバランス,患者さんの年齢-などを考慮した専門的な判断に委ねられる.

「叢生」の第1期治療(思春期前)では,拡大装置などを用いて歯槽部を大きくする治療法を優先し,永久歯を抜くことはできるだけ避けるようにしている.一方,第2期治療や成人矯正においては,一般的には抜歯の可能性が高くなる.しかし,前にも触れた「仮骨延長法」などの先端技術を利用することによって,成人の顎骨であっても大きくすることが可能になりつつあることから,将来は抜歯をしない「叢生」の治療が当たり前になるかも知れない.

投稿者 菅原準二 : 2007年05月13日 16:58

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