2007年05月12日
11.上顎前突の治療
「上顎前突」とは俗に言う出っ歯のことで,上の前歯が突出したかみ合わせのことを意味する.異常が一目で分かる反対咬合と異なり,上顎前突は前歯の突出の程度によって正常咬合と区別するため,程度がひどくなければ患者さん自身が異常を認識することは難しい.
上顎前突は,①顎骨には異常がない,②上顎骨が大きい,③下顎骨が小さい- という三つのタイプに大別されるが,それぞれのタイプによって治療の進め方が異なる.
まず①の場合,子供の患者さんに対してはヘッドギアと呼ばれる顎外固定装置(首や頭の後部を支えにして上顎の大きゅう歯を後方移動させるようなゴムの力を伝える装置)を短期間(半年前後)用いた後,マルチブラケット装置によって上の歯を奥歯から順に後退させる第1期治療が行われる.その後の安定性はおおむね良好で,第2期治療を省略することも少なくない.一方,成長が止まった患者さんに対しては,そのような方法では効果が望めないことから,通常は,犬歯の後ろにある左右の小きゅう歯を抜いて隙間を設けた後に,マルチブラケット装置を用いてその隙間に向かって前歯を後退させる治療が行われる.
次に,②上顎骨が大きいタイプの場合,子供については①のタイプと同様にヘッドギアを最初に用いる.しかし,その目的は大臼歯の後方移動だけではなく,上顎骨全体の成長を抑制することであり,比較的長期間(1〜2年)を要する.そして,顎骨のバランスが整ったところでマルチブラケット装置を用いてかみ合わせの調整がなされる.その後,成長などに伴って後戻りを生じることもあることから,第2期治療を考えておく必要がある.成人に対しては,通常は①のタイプと同様の治療が行われるが,程度が著しい場合には「外科的矯正」によって上顎骨全体あるいは前歯部を一塊として後退させる必要がある.
最後は,③の下顎骨が小さく,相対的に上顎前突を示すタイプである.子供の場合,第1期治療で機能的矯正装置(下顎骨の成長を促すためのプラスチックとワイヤーで作られた装置)という取り外し可能な装置が用いられることが多い.それ以後は②のタイプと同様の処置になるが,下顎骨の残りの成長を有効に利用するために,第2期治療を早めに開始することもある.また,年齢に関係なく,下顎骨が著しく小さな場合には,舌根が沈んで上気道が閉ざされ「睡眠時無呼吸症候群」という睡眠障害を伴っていることもある.その様な患者さんに対しては,「外科的矯正」だけではなく,最近では「仮骨延長法」(下顎骨を切り離し,一定の期間をおいてから骨片を機械的に牽引延長する方法)によって下顎骨を大きくする技術も導入されている.
投稿者 菅原準二 : 2007年05月12日 16:57
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