2007年05月11日

10.反対咬合の治療

不正咬合の矯正治療について,少し具体的に説明してみたい.まず最初に取り上げるのは「反対咬合」である.これは俗に受け口と呼ばれ,文字どおり上下の前歯が通常とは反対にかんでいる状態を表している.程度がひどくなれば,前歯で咬み切れない,発音がうまくできない,唇が閉じにくいなどの機能的な障害を伴うようになる.

反対咬合の治療に際しては,顎骨の不調和の有無を見極めることが重要だ.それによって治療の難しさや進め方が異なるからである.

まず,顎骨に問題がない場合は,治療は比較的容易である.前歯が生える時に何らかのきっかけで方向が変わり,反対咬合になった可能性が高いと考えられるからだ.このタイプに属する乳歯の反対咬合は,前歯の交換期にかなりの割合で自然に改善する.治療法としては,主にマルチブラケット装置(個々の歯の表面に接着剤でつける金属製やセラミックス製の数㍉角の小さな装置)という口の中の装置だけを用い,形状記憶合金などでできたワイヤーの弾性を利用して上の前歯を外側に動かす方法が一般的だ.しかも,短期間で改善し,再発の危険性も低い.子供の場合には,思春期前の第1期治療だけで良い結果が得られ,思春期後の第2期治療を省略することも少なくない.

一方,上顎が小さい,下顎が大きいなど,顎骨に問題がある反対咬合は「下顎前突」とも呼ばれ,その程度がひどくなるにつれて治療の難しさも増す.遺伝的傾向が認められることが多く,乳歯から永久歯に代わる時に自然に良くなることはまずない.子供の場合には,第1期治療において,口の中だけではなく外につける装置も併用して,顎骨のバランスを整えながら反対咬合を改善する方法がとられる.もし,その後の成長観察期に再発した場合には,第2期治療においてマルチブラケット装置を用いて細部にわたる修正が行われる.なお,患者さんには敬遠されているが,第1期治療で用いられる口の外につける装置としては,上顎の成長を促すための前方けん引装置(上顎を前に引き出すようなゴムの力を伝えるキャッチャー・マスク様の装置)が効果的である.下顎骨の成長を抑えるために用いられていたチンキャップ装置(下顎を後退させるようなゴムの力を伝える帽子型の装置)は,以前ほどは使われなくなってきている.また,顎骨の不調和が極めて著しく,「顎変形症」の域に達している子供に対しては,あえて第1期治療は行わず,顎骨の成長が停止するのを見届けた上で,外科手術によって上顎を前に出したり,下顎を後退させるなどの「外科的矯正」を行うのが確実な方法だ.

投稿者 菅原準二 : 2007年05月11日 16:56

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