2007年05月04日
3.不正咬合の見方
他の診療科と同様に,矯正歯科においても分類が重要である.症状を分類することが診断や治療方針の基盤になっているからだ.
矯正歯科の主な診療対象は「不正咬合(ふせいこうごう)」である.これは,「上下の歯列をかみ合わせた時の位置関係にズレがある状態」を意味する.かみ合わせのズレは多様であり,それぞれ治療の進め方や難しさも異なることから,まず「不正咬合」の分類から知っていただきたい.
矯正歯科医は,患者さんを前にした時,「はい,口を開けて」とは言わない.まず,口を閉じた状態で,顔の形や口元のバランスを観察することから始める.その患者さんの「不正咬合」が歯並びだけの問題なのか,それとも歯列を支える顎骨の不調和によるものなのかを見きわめるためである.顔面骨格は三次元構造体であるが,顔の形を側面と正面に分けて評価すると理解しやすい.「不正咬合」の診断や治療にかかわる重要な情報は,側面顔(横顔)により多く含まれると思うので,ここでは側面顔について述べる.
細部にまでこだわれば,人の側面顔は十人十色で分けようがないが,大まかには前後および上下的バランスによって9つのタイプに分類される.すなわち,顎骨の前後的バランスによって「下顎が突出している(下顎前突),普通,後退している(下顎後退)」の3タイプに分けられる.さらに,顔の上下的バランスによっても,「顔が長い(長顔),普通,短い(短顔)」の三タイプに分けられる.それら3×3の組み合わせによって9タイプの側面顔が成立するわけである.
患者さんの側面顔がどのタイプに分類されるかが明らかになれば,口の中を見なくとも,かみ合わせの状態は想像がつく.前後的バランスが「下顎前突」タイプでは「反対咬合(受け口)」に,「下顎後退」タイプでは「上顎前突咬合(出っ歯)」になる確率が高くなるし,上下的バランスが「長顔」タイプでは「開咬(奥歯をかみあわせても上下の前歯が重ならず隙間があく)」を,逆に「短顔」タイプでは「過蓋咬合(上下の前歯が過度に深く重なる)」を示す傾向が強まるからだ.
このような見方にしたがえば,「正常咬合(良いかみ合わせ)」の多くが,顔面骨格の前後的および上下的バランスがともに普通タイプかそれに近いという条件下で成立することも納得できるであろう.つまり,「不正咬合」の見方は,かみ合わせのズレだけにとらわれるのではなく,歯列を支える顔面骨格のバランスに問題がないかどうかを見きわめることがポイントだ.
投稿者 菅原準二 : 2007年05月04日 14:12
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