2007年05月03日

2.専門医の育成

矯正歯科を標榜(ひょうぼう)している開業医はつぎのように大別される.第1は,大学卒業後に矯正歯科の卒後教育を受けて矯正歯科だけで開業した場合.第2は,矯正歯科の卒後教育を受けた後に,矯正歯科だけでなく一般歯科などとの複数科名で開業した場合.第3は,卒後教育は受けていないものの,矯正歯科に関する何らかの修練を積み,複数科名で開業した場合である.いわゆる「矯正専門医」とは第一の場合を指し,そのほとんどが日本矯正歯科学会の認定医や指導医の資格を取得している.

ところで,矯正歯科の科学的基盤を支えている学問,すなわち「歯科矯正学」は,歴史的には17〜18世紀にイギリスやフランスで芽生え,19〜20世紀にアメリカ合衆国で生物学をベースにした学問として体系化され,第二次世界大戦後に本格的に日本に導入された.ちなみに東北大学においては昭和43年に歯科矯正学講座が新設され,「歯科矯正学」の卒前教育が開始された.さらに,教育スタッフなどの体制が整った昭和55年ごろから「矯正専門医」を養成するための卒後教育も本格的に行われるようになった.

なぜ6年間の学部教育で矯正歯科診療ができるようにならないのか,不思議に思う方もいるかも知れない.しかし,卒前教育では他の課目とのバランスで,「歯科矯正学」の講義や実習時間を十分に獲得することができないため,学部卒業までに基本的な知識と診断能力を身につけさせるのが精一杯であり,本格的な教育は卒後教育に委ねられているのが現状である.卒後教育コースは,公的に設置されている大学院(4年制)とはまったく別で,各大学の歯科矯正学講座が自主的に設けている「私塾」のような存在である.東北大学では,全日・3年制の卒後教育コースを実施しており,大学院生も含めて,すべての新入医局員がこのコースを履修する仕組みになっている.かなり厳しいカリキュラムの中で臨床と研究の研修を続け,最後の認定試験を経て初めて,若き矯正歯科医が誕生する.大学に入学してから実に10年目の春のことである.一般的には,その後さらに数年間にわたり,大学病院や矯正歯科医院などで多くの臨床経験を積み,やっと「矯正専門医」として独立することが可能になる.前に述べた日本矯正歯科学会・認定医の資格条件の中にも,大学などの指定研修機関で5年以上の臨床経験を積んでいることが義務づけられている.

地域社会において矯正歯科の中核として働いている「矯正専門医」が,このようにして育成されていることはあまり知られていない.

投稿者 菅原準二 : 2007年05月03日 14:03

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