2007年04月25日
8.成人矯正
前回は,不正咬合を子供のうちに治療することが理想的であると述べた.しかし,親の健康意識や経済的および時間的な問題などによって,適切なタイミングで治療を受けることができない方も沢山いる.あるいは,大人になってから不正咬合が気になり始めるという方も少なくない.そのような患者さんのために,次善の策として「大人の矯正治療」すなわち「成人矯正」が行われている.
かつて,矯正治療は子供の頃にしかできないものとあきらめられていたが,診断や技術が飛躍的に進歩した現在では,歯やそれを支える組織(歯周組織)が丈夫であれば例え高齢者であっても治療が可能になった.
「成人矯正」を「子供の矯正治療」と比較してみると,利点としては,①「顔の成長」が終了している分,治療後の予測が立てやすいこと,②患者さん自身が治療の動機を持っていることが挙げられる.一方,欠点は,①歯周病や顎関節症(がくかんせつしょう)など他の疾患を伴っていることが多い,②治療が大がかりになる,③歯が動きにくい,④矯正装置の外見に対するこだわりが強いことなどである.このように「成人矯正」には利点よりも欠点が多く,治療上さまざまな配慮が必要であるが,その目的は,口元のバランスを整えて健全なかみ合わせを獲得し,患者さんにできるだけ質の高い生活をおくっていただくことであり,「子供の矯正治療」のそれと変わらない.確かに,理想的な矯正治療の時期を逸してはいるものの,それでも患者さんが受けるメリットは大きい.
虫歯や歯周病が進行して歯を失い始め,さらにかみ合わせやアゴの機能にも著しい変調をきたして入れ歯を作ることもできず,ものが満足にかめなくなった状態を「咬合崩壊」と呼ぶ.一般の歯科医院では治療が不可能で,歯学部附属病院・矯正歯科に紹介されてくる「咬合崩壊」の患者さんが増えている.30〜50歳代の方がほとんどだが,これまではどこで治療してもらえるのか分からず,適切な対応を受けていなかった患者さんたちである.診察して驚くことは,このような「咬合崩壊」の背景に,子供の頃からの不正咬合が関与している場合が実に多いことだ.不正咬合の終末像とも言えそうだ.「8020」達成者の中に不正咬合がほとんど含まれていなかったことにも通じるものがある.
しかし,不幸にしてひどい「咬合崩壊」をきたした患者さんに対しては,歯学部附属病院では,複数の診療科の専門医やスタッフによる「チーム医療」という診療体制で臨んでいるのであまり心配には及ばない.
投稿者 菅原準二 : 2007年04月25日 16:54
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