きょうの矯正歯科

sugawara_100_070101.jpg

このタイトルは、私が日頃尊敬申し上げている中里信和先生(財団法人広南会広南病院・臨床研究部長)の「きょうの脳磁図」からのパクリです。「きょうの矯正歯科」という語呂合わせは結構イケるのではないかと思ったのが始まりです。とは言っても、それではいささか話が大きく不遜なってしまうので、ささやかなブランド名と勝手に思っているSASを右肩に載せてカスタマイズすることにしました。

このブログの主である私こと菅原は、なぜか矯正歯科という分野に首を突っ込んでしまい、以来34年間、この業界で棲息しています。いつしか齢を重ねるごとに矯正歯科がとても興味深い医療分野であることを認識するようになり、ここに至るまで職業選択に後悔することもなく仕事をさせていただきました。すべて、これまでに出会った患者さんや親御さん、恩師、先輩、仲間、後輩のお陰と感謝しています。矯正歯科の何がそんなに興味深いのか、なぜ34年経ってもワクワクとして仕事ができるのかについては、とても一言では言い表せません。そこで、このブログを通じて、その辺のところを少しでもお伝えできれば思っています。

2009年12月16日

第21報 第8回アジア・インプラント矯正カンファレンス(AIOC)の開催 (2009年9月9~10日)

 インプラント矯正という用語は、10年ほど前に私が定義したものであるが、各種インプラントを絶対的な固定源として利用する矯正治療法を意味する。
 最近では、TAD (Temporary anchorage device)という用語も使われているが、内容的には大同小異でほぼ同じ意味と考えて良い。現在主流を占めているのはスクリュータイプ(ミニスクリュー、ミニインプラント、マイクロインプラント)とプレートタイプ(ミニプレート)であるが、いずれも21世紀になってから日本や韓国など東アジアを起点として世界に拡がった画期的な治療法だ。その推進役を担ってきたのがAIOCだが、このカンファレンスは、2000年にシカゴで開催された第100回アメリカ矯正歯科学会記念大会(AAO)で講演に招かれた私とProf. Young Chel Park(韓国)が発起人になり、Dr. Eric Liou(台湾)を加えて、日本、韓国、台湾の持ち回りで毎年開催することにしたのが始まりだ。AIOCは今年で第8回目を迎えたが、昨年ソウルで第7回AIOC と第1回WIOC(世界インプラント矯正カンファレンス)が併催されたが、来年からはAIOCを発展的に解消し、WIOCに完全移行することになっている。

 さて、第8回AIOCであるが、私が大会長になって、仙台で開催することになった。長坂浩先生に事務局長を引き受けてもらい、東北大学OBの佐伯修一先生、御代田浩伸先生、鈴木裕樹先生に事務局入りしていただき、少数精鋭で本年1月から本格的に準備活動に入った。限られた予算で、海外からの講演者の招待をどうするかなど、難問が多々あったが、多くの方々の支援を受けて何とか開催に漕ぎ着けることができた。

IMGP6689-%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%83%94%E3%83%BC.jpg まず、大会前夜に講演者やモデレーターを対象にしたレセプションを、仙台銀座の「Beer TARU」を貸し切りで行った。30人定員の店に50人以上もの外国人が集まり、外の路地まではみ出し、英語でワイワイガヤガヤと雑談が始まったものだから、普段あまりにぎわうことのない仙台銀座がにわかに国際村のようになって、通行人もびっくり。

CIMG6414-%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%83%94%E3%83%BC.jpg  明けてカンファレンス初日の9日は内外合わせて13題の講演があり、活発な討論がなされた。言語はすべて英語で一切通訳なしで行ったものの、不慣れなはずの日本人も堂々として講演しており、とても誇らしく感じた。夜は、仙台国際ホテルでGala dinnerを催した。外国人に日本の料理を存分に楽しんでいただこうと、ホテルの中村善二シェフには特別の計らいをしていただいた。また、アトラクションとして津軽三味線、雀踊り、仙台フラメンコ(顎顔面外科の小枝聡子先生のご好意による)などを用意した。いずれも楽しんでもらえたが、とくに参加型の雀踊りが大好評だった。

 二日目の10日は、12題の講演があり、前日と同様に充実した内容であった。この二日間の講演内容は総じて先端的で、AIOCを始めた頃と比べるとすでに隔世の感がある。写真3は講演者およびモデレーターの集合写真であるが、最新の情報を提供してくれたすべての講演者と、実りある討論を導き出してくれたすべてのモデレーターに感謝。IMGP6714-%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%83%94%E3%83%BC.jpg

 そして、仙台におけるAIOC最後のイベントは、温泉ツアー。仙台近郊には秋保や作並といった有名な温泉地があるが、今回は夕方から秋保温泉・ホテル佐勘への日帰りツアーを企画した。仙台牛のしゃぶしゃぶを堪能した後に、ゆっくりとお湯につかってリラックスしてもらおうという目論見だ。%E6%B8%A9%E6%B3%891.jpg 日本人や韓国人はともかく、欧米人に温泉はどうかとも思ったが、とてもエンジョイしてくれたので、安心した。この写真はその時のものであるが、まさに裸のつきあいをしたことになり、忘れ得ぬ思い出になった。



投稿者 菅原準二 : 09:02 | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年12月09日

第20報 ソウルでのSurgery Firstセミナー(2009年7月19日)

 顎変形症に対する外科的矯正は、主に顎骨の外科手術を担う口腔外科医と歯列矯正を担当する矯正歯科医とのチーム医療で行われてきた。その治療の進め方は、術前矯正を施して上・下顎歯列の形態を整えた後に、顎矯正手術を施し、さらに術後矯正で仕上げを行うのが一般的だ。このように矯正治療を先行させる進め方をOrthodontics First(OF)と呼ぶとすれば、OFにはほぼ半世紀の歴史があり、確実な成績を収めることができる方法として世界的に定着している。しかし、一方では、①顎変形改善の時期が遅れる、②最初に手術の時期が決められない、③術前矯正によって前歯の関係と口元の形が悪化する、④治療期間が長い(2年〜3年)などの問題点が指摘されてきたものの、それを改める術がなく、患者に我慢を強いるしかなかった。

 これらOFの問題点を克服する革新的な治療法がSurgery First (SF)だ。SFは、文字通り最初に顎矯正手術を行い、後で矯正治療を施すという、これまでとは逆の手順で進められる。治療期間が短い(約1年)、最初に顎変形が改善される、手術時期が自由に選べるなど、前述したOFの欠点を解消し、患者利益が著しく増大した方法だ。私が知る限り、公的な国際会議の場でSFという治療法を発表したのは仙台チーム(東北大学病院顎顔面外科+SAS矯正歯科センター)が最初で、国際学会誌に報告したのも仙台チームが最初だ。世界に目を向ければ、他にはほぼ同時期に開始したとされる韓国のソウルチームによるSurgery First Orthognathic Approach(SFOA: http://www.asfoa.org/ )がある。しかし、最初に顎矯正手術を行うという点では同じであるものの、その内容は似て非なるものである。

 仙台チームとソウルチームの最も大きな違いは、治療ゴールの設定に対する考え方だ。仙台チームでは、顎骨の問題点は外科手術で、歯列の問題は矯正治療で改善するという立場を取っているが、ソウルチームでは、顎骨の問題だけでなく、歯列の問題もできるだけ外科手術でカバーするという考え方に基づいている。すなわち、仙台チームでは口腔外科医と矯正歯科医がイコールパートナーとして連携しているのに対して、ソウルチームでは、形成外科医(口腔外科医ではない)が主導して、矯正歯科医がフォローするという連携の仕方だ。  今回の一日セミナーは、そのソウルチームのやり方に常々疑問を抱いていた韓国の矯正歯科医や口腔外科医が、仙台チームのSFを知りたいとのことでソウル大学の協力を得て企画された。

%E5%86%99%E7%9C%9F%EF%BC%91%20%E4%BC%9A%E5%A0%B4%E9%A2%A8%E6%99%AF.JPG  会場はソウル大学歯学部の大講堂であったが、講演は私と長坂浩先生(東北大学顎顔面外科)とがそれぞれの専門領域に分担して行った。午前9時から午後5時までの長丁場であったが、途中で立見が出るほどの盛況ぶりで、SFに対する関心の高さをうかがい知ることができた。講演では、診断や治療ゴールの設定法などSFの根幹をなす内容から始まり、多数の治験例の提示まで、詳しく解説したことから、参加者は仙台チームの臨床理念や治療技術を理解し、ソウルチームのSFとの違いを十分に認識してくれたようだ。

%E5%86%99%E7%9C%9F%EF%BC%92%20%E3%82%BB%E3%83%9F%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%82%92%E7%B5%82%E3%81%88%E3%81%A6.JPG 左の写真はセミナー後の集合写真であるが、梨花女子大学のMyung-Rae Kim学長、ソウル大学のTae-Woo Kim教授、チョンナム大学のHyeon-Shik Hwang教授など、韓国の矯正歯科界や口腔外科界の重鎮の顔も見える。

%E5%86%99%E7%9C%9F%EF%BC%93%20%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%B3%E4%BC%9A.JPG また、こちらの写真は、川村仁教授(東北大学)と私とが共著で出版した「現代外科的矯正治療の理論と実際」(東京臨床出版)の韓国語翻訳版が発売されたので、その記念サイン会風景だ。韓国美人を前に、緊張で手が震えた(笑)。

 

投稿者 菅原準二 : 11:34 | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年12月04日

第19報 外科的矯正セミナー(2009年6月6~7日)

 シンセス株式会社主催の「Orthognathic Surgery Seminar in Tohoku 2009」が、Prof. W.H. Bell (USA) とProf. J.E. Van Sickels (USA) をゲストスピーカーに迎え、日本顎変形症学会の翌日から二日間にわたって開催された。日本側の講師は高木多加志先生(東京歯科大学)、山口芳功先生(草津総合病院)、川村仁先生(東北大学)、長坂浩先生(東北大学)と私であった。

 本セミナーは、主に若手口腔外科医を対象にしていたが、外科的矯正治療の歴史に始まり、最新の治療法に至るまで、講義はコンパクトにまとまっており、かつマネキンを用いた手術法のハンズオン実習も組み込まれていたことから、受講者には好評で、昨年に引き続き開催されたものである。

%E5%86%99%E7%9C%9F%EF%BC%91%20Prof.%20Bell%E3%81%A8%E3%81%AE%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3.jpg  今回のセミナーの目玉は、何と言っても御年82歳になられたProf. Bellの話を直に聞けることであった。Prof. Bellは、東北大学の川村教授の師匠で、我々が外科的矯正に関わり始めた頃は、それこそ神のような存在であった。当時、Prof. Bellが書いた顎矯正手術の教科書は、それこそバイブルのように世界中で読まれていたのである。その彼と、一緒の場で講演をすることなど夢にも思わなかったことであるが、とても感慨深いものがあった。

%E5%86%99%E7%9C%9F%EF%BC%92%20Prof.%20Bell%20%E3%81%A8%E3%81%AE%E3%83%84%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%88.jpg  さらに、私の講演を聴いてくれた彼から、お褒めのコメントを頂戴したが、これも実に光栄なことであった。82歳になって、一人でアメリカから仙台まで講演に訪れるという気力と体力には脱帽である。果たして、自分が80歳を越えてかようなことができるかどうか、全く自信がない。また、ここに私のロールモデルを見いだした貴重な二日間であった。

投稿者 菅原準二 : 13:49 | コメント (0) | トラックバック (0)

第18報 第19回日本顎変形症学会シンポジウムでの講演(2009年6月4日)

 矯正治療における難しい問題の一つとして、例えば小学生の時点で下顎が極端に大きかったり、逆に小さ過ぎたり、あるいは明らかな非対称(側方偏位)を伴っている患者さんにどのように対応したら良いのかということがある。すなわち、顎骨の大きさや位置に著しい不調和があり、外科手術(顎矯正手術)の適応になる成人患者さんのことを顎変形症(保険用語)と総称しているが、その子ども版の問題です。実は、その対応法は医療施設によってまちまちで、コンセンサスが得られておりません。%E5%86%99%E7%9C%9F%20%E4%BC%9A%E5%A0%B4%E9%A2%A8%E6%99%AF.jpg

 去る6月4〜5日に日本顎変形症学会(主管:東北大学顎顔面外科、大会長:川村仁先生)が仙台国際センターで開催されましたが、その問題に関するシンポジウム「成長期の重度骨格性不正咬合への対応」が行われた。話題提供者は、鹿児島チーム(黒江和斗先生、吉田雅司先生)、東北大学チーム(私、川村仁先生)、東京医科歯科大学チーム(鈴木聖一先生、黒原一人先生)、昭和大学チーム(槇宏太郎先生、代田達夫先生)で、それぞれの考え方と実際の対応法が紹介された。

 その結果、対応法は概ね二つに分かれた。すなわち、一方は、子どもの社会心理面や口腔機能に配慮して、顎の不調和が悪化することを少しでも抑制あるいは改善しようという目的で、顎成長をコントロールする治療(顎整形治療)や歯の移動を積極的に行うという考え方。もう一方は、顎整形治療の効果の限界を認識し、治療の確実性を優先して、顎成長が終息するまで成長観察を行った後に治療を開始するという考え方である。
 私たちのチームは、例外を除いて、後者の立場をとっているが、その主な理由は以下のとおりである。

続きを読む "第18報 第19回日本顎変形症学会シンポジウムでの講演(2009年6月4日)"

投稿者 菅原準二 : 12:56 | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年05月04日

第17報 第109回アメリカ矯正歯科学会(AAO)での講演

 メキシコ発の豚インフルエンザ(swine flu)で海外旅行すら危ぶまれる状況の中で、今年の第109回アメリカ矯正歯科学会(AAO)が5月1日から5日にわたってアメリカ東海岸のボストンで開催された。日本からの参加予定者の一部は豚インフルエンザの危険を避けるためにキャンセルされた方もおられたようで、日本人参加者はとりわけ少ないという印象を受けた。私は2日に日本を発ってワシントンDC経由で現地入りした。日本のメディアの豚インフルエンザ報道が連日トップニュースであったため、気分的には戦地にでも赴くような心境であったが、旅行客や現地の人々はどちらかと言えば無関心で、話題にも上らず、マスクをしていたのは日本人だけという異様な光景で、日本人だけがやけに浮いていた。加えて、アメリカからの帰国者全員に10日間の監視を義務づけるというニュースを聞くに及び、両国間のあまりのギャップに、アメリカ人が無頓着なのか、日本人が神経質過ぎるのか、思わず考え込んでしまった。

09AAO1.jpg  ともかく、大会は予定通り開催された。今年は、私の師匠の一人である Prof. Ravi NandaによるJV Mershon Memorial Lectureが行われたことが話題の一つであった。40年に及ぶ彼の研究生活を振り返り、これからの矯正歯科を考えるという内容であったが、巨大な会場で立ち見が出るほどの数の聴衆をぐいぐいと引き込んで行く講演は見事であった。



09AAO2.jpg その夜は、私が留学していたコネチカット大学の同門会に出席した。今年はProf. Ravi Nandaが授賞したということもあり、これまでの倍以上の130名もの同門生が出席し、大変な盛り上がりようであった。私が留学していた当時に院生であったDr. Rohit SachidevaやDr. Wayne Hickoryなど、懐かしい面々と再会の喜びを分かち合うことができた。と同時に彼らがそれぞれの立場で成功を収め、デジタル矯正歯科とも言うべき独創的なビジネスを展開していることに、大いに刺激を受けた。

09AAO6.jpg 4日の午後、私は「”Surgery First” Surgical Orthodontics」と題した45分間の講演を行った。インプラント矯正(TADs)をテーマにしたセッションの3番手に組み込まれていたが、トップバッターのDr. Mainoの講演時には昼食直後であったせいか出席者が少く、いささか気になっていたが、その後次第に増え,私の時にはほぼ会場全体が埋まっていたので一安心。講演する時には出席者数次第で話の乗りが違ってくるので、出席者数は気分的に重要な要素である。私は、顎変形症治療の将来モデルとしてのSurgery First がいかに多くの患者利益をもたらすかについて話をしたが、その意図は十分に理解していただいたようであった。

09AAO3.jpg 最終日の5日は、いくつかの講演を聴いた後に、大雨の中をBoston Fine Art Museumを訪れ、一流の美術品をしばし堪能した。ここを訪れたのは27年ぶりであったが、この間に世の中はすっかり変わってしまったにも関わらず,ここではすべてが当時のままのたたずまいを残していたことに深い安堵感を覚えた。本来であれば日本で保存されるべき浮世絵もこの美術館に所蔵されているが、貴重な文化遺産を完璧に保存し、後世に伝えて行こうという努力がなされている限り、母国で保存されるべきという考えに固執する必要はないのであろう。



09AAO4.jpg 5日の夜は、日本から来ていた友人達と連れ立ってUnion Oyster Houseというボストンでは老舗のシーフードレストランで食事をした。かつては度々訪れたことのあるお店であったが、古いたたずまいはおろか、メニューも以前といささかも変わらず、まるで20年以上前にタイムスリップしたかのような気持ちになった。今回も定番のロブスターをいただいた。これでも最も小さなサイズであったが、添え物も多く、食べ切れるものではなかった。

09AAO5.jpg 5月7日に往路と同様に、ワシントンDC経由で成田空港に到着したが、検疫官が数名乗り込んできて、乗客全員にマスクをさせ、サーモグラフで発熱の有無をチェックし、約1時間をかけて一人一人の健康状態をチェックしていた。アメリカ国内では空港でもどこでも注意を促されることもなかったことから、日本の検疫体制の徹底ぶりが際立っていた。人口密度の高い日本としては致し方のない措置であろう。でも、隣に座っていたアメリカのご夫人には理解できないらしく、「アメリカ人はこうやって待たされるのには耐えられないのよ」と文句を言っていた。

投稿者 菅原準二 : 10:18 | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年03月27日

第16報 モントリオールでのセミナー

 ケベック矯正歯科学会の招きで、カナダのモントリオールでワンデー・セミナーを行ってきました。09QAO1.jpg3月25日に日本を発ち、アメリカ在住の長女と次女とワシントンDCで合流して、一緒にモントリオールに到着。家を出てから20時間ほどの長旅でした。モントリオールは1982年の冬にノースイースタン矯正歯科学会で訪れたことがあり、実に27年ぶりでした。ケベック州モントリオールはフランス語が公用語で、まるでパリにでもいるようで、お店の名前も殆どがフランス語で表記されているので、発音すらおぼつかない感じでした
 26日は少し時間があったので、散歩がてら古い建物が残っている旧市街に足を向けてみました。印象的だったのはBasilique Notre-Dame
という荘厳な教会でした。今は、セリーヌ・ディオンがここで挙式したことで
知られているようです。 昼は旧市街に隣接しているチャイナタウンで飲茶を楽しみました。

 ケベック矯正歯科学会は、会員数は約150名とのことでしたが、私のセミナーにはその半分の80名が参加してくれました。
09QAO2.jpg  右の写真はセミナー開始15分前の会議室風景ですが、予想したように午前8時半の開始時間通りには始まらず、15分遅れでスタートしました。モントリオールでは、すでにミニスクリューは皆さん日常的に用いているとのことで、理論編はすっ飛ばしていいから、ミニプレートを適用した臨床例を数多く見せて欲しいという注文でした。つまり、ミニスクリューとミニプレートの適応症が分かりかねている様子で、それが、わざわざ私を日本から呼び寄せた理由でした。昼休みを挟んで午後5時すぎまで講演を行いましたが、多くの非抜歯症例や難症例を通して、ミニプレートを矯正用固定源に利用した治療法の威力を感じていただけたようでした。そのことは、会員から寄せられた沢山の質問や、後日ケベック矯正歯科学会会長のDr Catherine Jompheからミニプレートの購入先や埋入手術のビデオを送って欲しいというメールが送られてきたことからも、伺い知ることができました。

 講演後は娘達とライブジャズを楽しもうと予約していたレストランに向かいましたが、途中で The Iluminated Crowdという彫像を見つけました。09QAO3.jpgこれはRaymond Masonという芸術家の作品で、レジン製で表面はポリウレタンで覆われているとのことでしたが、とても斬新な作品で、遠くからもひときわ目立っていました。

 モントリオールは毎年ジャズフェスティバルが開催されることでも有名ですが、レストランではライブを楽しむ間もなく、グーグー寝てしまい、娘達に失笑されてしまいました。まさに、お疲れさまでした。

投稿者 菅原準二 : 09:41 | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年12月07日

第15報 オランダでの外科矯正シンポジウム(BSSO)

0711294-1jpg.jpg   2007年11月29日と30日にオランダのハーレムで開催された2007 Biennial Symposium Surgical Orthodonticsにおいて講演をしてきました。ハーレムと言えばニューヨークを思い浮かべるかも知れませんが、ニューヨークのハーレムはHarlemで、オランダのハーレムはHaarlemとスペルが少し違いますが、ニューオークのハーレムの語源になっているとのこと。ハーレムはアムステルダムせいの郊外にある閑静な町で、聖バフォ教会,グローテ・マルクト広場,テイラー美術館など,主な観光名所は徒歩で数分の所に集中しています。ハーレムのかつての繁栄ぶりは、空に向かってそびえ立つ聖バフォ教会から容易に想像されます。その迫力はかつて訪れたことのあるケルンの大聖堂に匹敵します。図1は私が泊まったホテルのカーテン越しに撮影した教会の写真です。教会内部に設置された巨大なパイプオルガンにも驚かされました(図2) 。

  さて、BSSOはオランダの外科矯正チームが中心になって隔年開催されています。今回は、私の長年の友人で、このチームに関わりのあるDr.Joop Drenbosの招きによるものです。「包括歯科」「CBCTを用いた診断」「治療計画の立案」「術前矯正」「非外科的治療」「顔面非対称の治療」「開咬を伴ったLong faceの治療」に関する7つのセッションあり、私はこのうちの3つのセッションでSurgery First、SASによる開咬の治療、成長期/成人期の下顎前突治療についてそれぞれ30分ずつ話をさせていただきました。
  私以外では、Dr. G William Arnett、Dr. Vincent Kokich、Prof. Ravi Nanda、Dr. James Mah、Dr. Monica Palmerなどのビッグネームが講演者として招待されていましたが、彼らとはもう何度か他の学会やシンポジウムでも顔なじみになっており、その分だけリラックスした気分で講演をすることができました。それぞれ興味ある内容でしたが、とりわけDr. Palmerの「外科矯正治療計画における失望(Disappointments in Orthognathic planning)」と題した講演が印象に残りました。顎変形症の外科矯正治療においては手術失敗もさることながら、治療計画を立てる段階での失敗が見逃せない事実として存在するという問題提起でしたが、私も同じ思いを抱いていただけにとても納得できる内容でした。彼女はベルリンで開業している矯正歯科医で、 外科矯正を含む包括歯科を中心に診療をしていますが、同時にプロの画家でもあります。顎変形症の治療では、かみ合わせだけではなく容貌も扱うため、正解が分からない中で治療ゴール設定を強いられることから、術者にはスキル以外に芸術的センスが要求されます。患者の失望の多くは容貌に向けられることから、彼女の問題提起はいかにも芸術家らしい“ものの見方”を感じさせるものでした。

投稿者 菅原準二 : 14:32 | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年11月30日

第14報 第7回インプラント矯正研究会セミナー

インプラント矯正とは、各種インプラントを歯を移動するための固定源に利用するという画期的な治療法を意味します。インプラント矯正を歯科臨床において適切に定着させるため、当時インプラント矯正を手掛けていた臨床医が中心になって、2000年にインプラント矯正研究会を設立しました。そして情報交換の場として年1回のセミナーを10年限定で開催することにしました。当時、矯正用固定源に応用されていた材料はサンキン社製のミニインプラント(K1)とミニプレート(SMAP)しか販売されていなかったことから、サンキン社に事務局を置いて第1〜5回セミナーを開催しました。その後、サンキン社以外の製品も販売されるようになったことから、昨年から事務局をカノミ矯正・小児歯科クリニック(姫路市)に移して第6回セミナーを開催しました。そして、今年から当院SAS矯正歯科センターに事務局を移し、残り4回のセミナーの企画運営に当たることになりました。

 

続きを読む "第14報 第7回インプラント矯正研究会セミナー"

投稿者 菅原準二 : 10:28 | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年11月10日

第13報 チャイルドライフ支援ボランティア講座

10月28日に、私が関わっているNPO法人ワンダーポケット(http://www.w-p.jp/)主催による2007年度のボランティア講座が仙台厚生病院・海老名ホールで開催されました(図1)。本講座は「すべての子どもたちに命の輝きを」というワンダーポケットの理念に基づくNPO活動の一環で行われているものです。病気や障害を抱えた子どもへの支援だけではなく、その兄弟姉妹やご両親への支援をも視野に入れたボランティアを養成することが目的です。

 

図1 主催者側の挨拶

 

続きを読む "第13報 チャイルドライフ支援ボランティア講座"

投稿者 菅原準二 : 11:46 | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年10月20日

第12報 第89回アメリカ口腔外科学会での講演

5月以来、久々の外国講演でしたが、ハワイで開催された第89回アメリカ口腔外科学会に出席してきました。今回は、アメリカだけでなく、日本と韓国を交えた初めてのジョイントミーティングでしたので、日本からも多くの口腔外科医が参加しておりました。7-8日に東京でDr. PancherzによるHerbst applianceのセミナーに参加して、その足で成田からホノルルに発ちました。口腔外科学会ですから、私のような矯正歯科医の参加はほとんどない訳ですが、今回出席した理由は、ワシントン州立大学口腔外科のDr. Jessica Leeからの依頼で、二人で「Skeletal Anchorage System: Clinical Protocols for Surgeons」というテーマでミニレクチャーをしようというお誘いを受けたからです。美しい韓国系アメリカ人の女医さんなので断れませんでした(図1)。

 

 図1 Dr. Jessica Leeとともに

 

 

続きを読む "第12報 第89回アメリカ口腔外科学会での講演"

投稿者 菅原準二 : 10:11 | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年08月12日

第11報:ある再治療症例の治療を終えて(2)

再治療とは何かについては第3報(2007年2月23日)で詳しく述べましたので、知りたい方はそちらをご覧下さい。ここでは、最近治療を終えた再治療例を紹介します。このクライアントをMさんと呼ぶことにします。きっかけは顎関節症状でした。その治療を求めて近くの病院歯科を訪れたところ、かみ合わせの異常を指摘され。紹介されて私のところにやってきました。Mさん(22歳女性)のお話しによれば、小学生の頃に関東の某大学歯学部附属病院矯正歯科において反対咬合の本格的治療を受けた経験があるとのことでした。図1は、初診時に撮影したお口の写真ですが、前歯部開咬と反対咬合を呈していました。上下顎の第一小臼歯が4本なかったことから、マルチブラケット装置による治療がなされたことが想像できました。また、X線写真から上下顎切歯の歯根吸収が著しいことも分かりました。治療前の状態が知りたくてMさんにお願いしましたが、残念ながら、もう10年以上前のことなのでその大学病院に資料は保存されていないとのことでした。 

図1 再治療開始直前の状態 

続きを読む "第11報:ある再治療症例の治療を終えて(2)"

投稿者 菅原準二 : 09:03 | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年06月10日

第10報 口腔成育シンポジウムでの講演

仙台口腔成育シンポジウム・ファイナルが6月2・3日に仙台弁護士会館において開催されました(図1)。主催は仙台を中心にした歯科医グループで、今年は5年間限定開催の最終年ということでファイナルと銘打っていました。口腔成育とは、子どものバイオ・サイコ・ソーシャルに関わる包括的歯科医療や支援を意味し、子どもの継続的なお口のケアを通じて心の発達(セルフケア確立や自立)にも寄与することを目的としています。そして自分たちの身体や心を大切にしようとするマインドが次世代に継承されることへの期待もその中に込められています。

図1 代表挨拶

 

続きを読む "第10報 口腔成育シンポジウムでの講演"

投稿者 菅原準二 : 08:33 | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年05月21日

第9報:The Dewel Awardの受賞

これは実にサプライズでした。
2007年の B.F. and Helen E. Dewel Award (通称The Dewel Award)が私たちの論文に与えられることになったからです。The Dewel Awardとは、矯正歯科学分野のトップジャーナルであるAmerican Journal of Orthodontics and Dentofacial Orthopedics (AJO-DO)が、その前年に掲載された全論文の中から、最優秀論文が選ばれて贈られる賞で、AJO-DOの賞としては最も権威のある賞とされています(図1)。授賞対象になった私たちの論文とは以下のような論文でした。
Sugawara J, Kanzaki R, Takahashi I, Nagasaka H, Nanda R : Distal movement of maxillary molars in nongrowing patients with the skeletal anchorage system, Am J Orthod Dentfac Orthopedics 129;723-733, 2006.

 図1 AAO Bulletin記事

 

続きを読む "第9報:The Dewel Awardの受賞"

投稿者 菅原準二 : 19:11 | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年05月20日

第8報:アメリカ矯正歯科学会(AAO) での招待講演

AAOの年次大会は世界最大規模の学術大会で、参加者はアメリカ国内にとどまらず、世界各国から毎年約2万人の会員が集まります。今回で107回目の年次大会であることからしても、いかに伝統のある大会であるかが伺えます(図1)。私の年次大会での招待講演は、2000年シカゴ、2002年フィラデルフィア、2006年ラスベガスに続いて今度のシアトルで4回目ですが、その度に緊張を強いられています。講演後に聴衆による評価がなされ、その採点表が数ヶ月後に講演者に送られてくるからです。評価が低い場合は、以後、招待講演の機会が少なくなるという厳しさです。コンテンツが大事なのは当たり前のことですが、英語の発音が悪くて出席者に内容が伝わらないというのも減点の対象で、日本人だから発音は大目に見て欲しいという甘えは通らないようです。私を含め、日本人にとっては辛いことですが、世界の共通言語が英語になっている現在、避けることのできないハードルなのです。だから、若い日本の矯正歯科医には、英語力を付けるための継続的努力をしなさいと、いつも口が酸っぱくなるほど言っているのですが、きっと彼らには現実味もなく、危機感もない話に聞こえるのでしょうね。

 

図1 プログラム 

 

続きを読む "第8報:アメリカ矯正歯科学会(AAO) での招待講演"

投稿者 菅原準二 : 18:41 | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年05月17日

第7報:コネチカット大学での講義

5月15日にレンタカーを運転してボストン(マサチューセッツ州)からファーミングトン(コネチカット州)に向かいました。フリーウェイの91 Westから84 Southに乗っての約2時間のドライブでしたが、天候は快晴で、新緑が太陽に輝いて、とても清々しい気分で気持ちよく運転できました。そして、医学部と歯学部そしてそれぞれの附属病院や研修施設などが組み込まれたUniversity of Connecticut (UCONN) Health Center(図1)に無事到着しました。 

   
図1 Uconn Health Center 

 

続きを読む "第7報:コネチカット大学での講義"

投稿者 菅原準二 : 18:07 | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年05月15日

第6報:16th International Symposium での招待講演と・・・

ボストン大学が主催するインプラントロジーのシンポジウムに招待され(図1)、5月13日にサンフランシスコ経由でボストンに飛び、その日の夜10時頃にホテルであるBoston Marriotte Long Warfに到着しました。その時、古い友人でYonsei大学(韓国)の学部長でもあるDr. Young Chel Parkとばったりと出会いました。彼と暫く雑談をした後に部屋に入りましたが、すでに外食するような時間ではなかったので、ルームサービスを頼むことにしました。注文したのは、ボストン名物のクラブケーキ(蟹肉を固めて焼いたもの)とクラムチャウダー(図2)。久しぶりだったことと、お腹がすいていたこともあってか、とても美味かった。

図1 プログラム   図2 クラブケーキとクラムチャウダー

続きを読む "第6報:16th International Symposium での招待講演と・・・"

投稿者 菅原準二 : 17:38 | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年04月16日

第5報:21st Biennial Growth Seminarでの招待講演

ニューヨーク州とコネチカット州の矯正歯科医らによって構成されているNew-Conn Orthodontic Foundationという組織が、2年毎に42年間にわたってセミナーを主催してきました。今回は第21回セミナーになりますが、世界のトピックにもなっているインプラント矯正(TADs)が取り上げられ、「Temporary Anchorage Device and Implants in Orthodontics: When, Where, and Why Not?」というテーマで、ニューヨーク州White Plainsにおいて開催されました(図1)。招待講演者は、Dr.Anthony Gianelly、 Dr.Vincent Kokich、Dr.Giuliano Maino、Dr.David Sarver、Dr.Junji Sugawara(私)、Dr.Bjorn Zachrissonの6名でした。オペラの世界で言えばパヴァロッティ、ドミンゴ、カレーラスという三大テナーが一同に会したような豪華な顔ぶれで、この種のセミナーでは異例の400名を超える受講者が全米各地から集まるという盛況ぶりでした(図2)。

 

図1 リーフレット         図2 セミナー会場

続きを読む "第5報:21st Biennial Growth Seminarでの招待講演"

投稿者 菅原準二 : 08:37 | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年04月01日

第4報:アングル矯正歯科学会の年次例会に出席

The Edward H. Angle Society of Orthodotists、すなわちアングル矯正歯科学会は、近代歯科矯正学の父と呼ばれているE.H.Angleにちなんで設立された学会です。East, Midwest, North Atlantic, Northern California, Northwest, Southern California, Southwest という7つの支部に分かれており、企画運営はそれぞれの支部が独自に行っています。2年に1度、全体の集会があります。 

続きを読む "第4報:アングル矯正歯科学会の年次例会に出席"

投稿者 菅原準二 : 08:15 | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年02月23日

第3報:ある再治療例の治療を終えて(1)

◆再治療とは
「再治療学」というテーマは、ここ数年の私の関心事の一つで、昨年10月に横浜で開催された第34回日本臨床矯正歯科医会大会において「再治療症例から見えてきたこと -確実で安全な矯正治療を目指して-」というタイトルで特別講演を行いました。再治療の定義は「マルチブラケット装置を用いて永久歯列の全体的な咬合構成を図ったにもかかわらず、満足な治療結果が得られなかった場合や、治療後に何らかの要因で不正状態が再発してしまった場合に、患者あるいは術者側の希望に基づいて、再びマルチブラケット装置による本格的治療を行うこと」(2006菅原)です。再治療という言葉は少し和らげた表現で、実際は失敗症例のリカバリー治療を意味しています。

 

続きを読む "第3報:ある再治療例の治療を終えて(1)"

投稿者 菅原準二 : 23:12 | コメント (1) | トラックバック (0)

2007年02月11日

第2報:退官記念感謝会

昨年12月31日付けで私が東北大学を辞めたという話は先にしましたが、後輩の有志が中心になって呼びかけを行い、2月11日に私の退官記念感謝会を開催してくれました。会場は勝山館(しょうざんかん)。私は出席者が約180名を数えたことにまず驚きました。事務局からは呼びたい人を全部呼んで構わないからと言われて名簿を渡したものの、連休の中日でもあり、出席者はそれほど多くはないだろうと思っておりました。嬉しかったですね。

続きを読む "第2報:退官記念感謝会"

投稿者 菅原準二 : 19:59 | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年01月28日

第1報:フランス矯正歯科学会・継続教育コースでの招待講演

フランスの矯正歯科学会では、今年から国内外から講師を招いて会員向けの継続教育コースを開始することになったとのことで、その皮切りとして私が招聘されました。(図1)

図1 プログラム 

 

続きを読む "第1報:フランス矯正歯科学会・継続教育コースでの招待講演"

投稿者 菅原準二 : 15:44 | コメント (0) | トラックバック (0)